品番 B-18 / 会社 作り方 理念
会社の理念の作り方|経営理念とスローガンを一文にまとめる手順と、定款の目的との違い

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会社を作る準備をしていて、「経営理念を決めておいたほうがいい」と言われたけれど、何を書けばいいのか、定款の目的とどう違うのかがわからない人に向けた記事です。会社を作ったあとで、仲間に伝える言葉を整えたい人にも読めます。
- P-02 事業の目的
- P-01 会社名
- P-07 ロゴ
- P-12 名刺・封筒
01経営理念は法律で求められない部品――会社法が書かせるのは「目的」
会社を作る手順の中で、経営理念を決める場面はありません。株式会社の定款に必ず書く事項は、会社法第27条が並べています。目的、商号、本店の所在地、設立に際して出資される財産の価額またはその最低額、発起人の氏名または名称および住所の五つです。理念や社是、スローガンという言葉は、この中に出てきません。

株式会社の定款には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。
会社法 第27条(e-Gov 法令検索、2026年10月23日確認)
ここで気をつけたいのは、第27条の第1号に「目的」があることです。目的とは、会社がどんな事業を行うかを書いたもので、法務局に登記されます。経営理念は、会社が何のために事業を行うか、何を大切にするかという考え方です。名前が似ているので混ざりやすいのですが、役割はまったく別です。

経営理念は、作らなくても会社は成立します。設立の登記にも関わらないので、作り方の正解も一つではありません。設立の準備で忙しい時期は後回しにしても、法律上は問題になりません。反対に、作ったからといって登記や定款に載るわけでもありません。法律上の効果はなく、会社が自分の判断のために持つ道具です。だからこそ、好みで決められる自由度が大きく、迷いやすい部品だといえます。
この記事では、会社の理念の作り方を、例の読み方、言葉の違い、作る手順、スローガンとの関係、目的との区別の順に整理します。会社を作る前の人にも、作ったあとに整えたい人にも使える作り方の順番にしてあります。
02経営理念と企業理念のちがい:呼び分けに決まりはない
「企業理念と経営理念の違い」と調べると、企業理念は不変の存在意義、経営理念は経営の考え方で見直すもの、と分けて説明するページが見つかります。一方で、同じ意味で使う会社も多くあります。実際には、会社ごとに呼び方が違い、国や法律が決めた区別はありません。

中小企業基盤整備機構のJ-Net21は、企業の存在意義や経営の目的を明文化するものが経営理念で、経営理念を重視する経営手法が理念経営だと説明しています。そのうえで、ミッション(果たすべき役割・使命)、ビジョン(将来のあるべき姿、中長期的な目標)、バリュー(活動の拠り所となる価値観や原則)に加え、クレド、社是、モットー、スローガンなども広い意味で経営理念の要素になりうるとしています。そして、企業によっていろいろな要素と組み合わせがあり、定型はないといえる、とまとめています。
企業によっていろいろな要素と組み合わせがあり、定型はないといえる。
- ミッション
- 会社が果たす役割や使命。『何のために存在するのか』への答え
- ビジョン
- 将来こうなっていたいという姿。数年先の目標を含めることもある
- バリュー
- 判断や行動のよりどころにする価値観。『何を大切にするか』
- 社是・社訓
- 社員が守る心得を短い言葉にしたもの。呼び方は会社による
- スローガン
- 外に向けて掲げる短い言葉。キャッチコピーに近い場合もある
会社を作る人にとって大切なのは、言葉の呼び分けを覚えることではなく、自分の会社で何をどう呼ぶかを決めて、一貫して使うことです。名刺では企業理念、ホームページでは経営理念、採用ページではミッション、と呼び名が揺れると、読む側は別のものだと受け取ります。最初に呼び名を決め、一文で言い換えを添えておくと、迷いが減ります。
三つの要素を整理した資料もあります。中小企業白書(2022年版)は、研究者の整理として、経営理念・ビジョンをコアバリュー、パーパス、ミッションの三つの要素で説明しています。要素の名前や数にも、いくつかの考え方があるということです。
03理念の例の読み方:他社の言葉を借りず、構造だけ借りる
「会社 理念 例」で検索すると、有名企業の理念が並んだ一覧が出てきます。「経営理念 例 中小企業」と調べても、実際に出てくるのは、数十年続く大きな会社の文面であることがほとんどです。例を読むのは勉強になりますが、会社を作ったばかりの人がそのまま写すと、どこか借り物の言葉になってしまいます。

理念の作り方で、例から借りてよいのは、文面ではなく組み立ての構造です。たとえば経済産業省は、2024年3月にMission(存在意義)、Vision(目指す組織像)、Values(大事にしたい価値観)を定めて公表しています。会社ではない行政機関の例ですが、三つの問いに分けて短く答える形は、会社の理念を考えるときにも参考になります。
| 問い | 答えの方向 | 例を見るときの注意 |
|---|---|---|
| 何のために存在するのか(ミッション) | 誰のどんな困りごとに向き合うか | 大きな言葉で終わらせない |
| 将来どうなりたいか(ビジョン) | 数年先に実現したい姿 | 数字や期限は前提を添える |
| 何を大切にするか(バリュー) | 迷ったときの判断の物差し | 行動の例を一つ添える |
例を読むときは、使われている言葉の抽象度にも注目してください。「世界をよりよくする」のような大きな言葉は、会社の規模に関係なく誰でも使えます。そのぶん、他社との違いが出ません。反対に、「近所の飲食店の帳簿を月末に迷わず締められるようにする」のように、誰の何を助けるのかが具体的な言葉は、小さな会社でも使えます。
成功した会社の理念を集めた記事は、理念を掲げたから成功したのか、成功したから理念が語られるのか、因果がわかりにくい点にも注意が必要です。自分の言葉を見つける材料として読むのが、いちばん安全な使い方です。
04経営理念の作り方:テンプレートの問いに自分の経験を当てはめる
経営理念のテンプレートと呼ばれるものの多くは、穴埋めの文型か、順に答える質問表のどちらかです。穴埋めは短時間で形になる反面、似た文面になりやすい弱点があります。質問表は、自分の経験や考えを引き出せるので、会社を作る前の人にも向いています。設立前の人でも進められる、質問表の形の作り方を紹介します。

中小企業基盤整備機構の起業支援サイトでは、事業コンセプトの基本は『誰に・何を・どのように提供するか』をまとめていくことだと案内しています。この三つの問いは、経営理念の下書きにもそのまま使えます。事業の説明に近い内容から始めて、そこから『なぜそれをやるのか』を足していくと、理念らしい言葉になります。
- 1経験を書き出す
これまでの仕事や暮らしで、困った場面・嬉しかった場面を5つ書く - 2誰の困りごとかを選ぶ
書き出した中から、会社で向き合いたい相手と困りごとを一つ選ぶ - 3提供する中身を言う
何をどのように提供するかを、専門用語を使わずに書く - 4なぜやるのかを足す
その事業にこだわる理由を、一文で書く - 5一文にまとめる
全体を30〜50字ほどにまとめ、読み上げて詰まらないか確認する
仲間や家族に読んでもらい、「何の会社かわかる」「ほかの会社でも使えそう」の二つの感想をもらってください。後者が多いなら、言葉が抽象的すぎる合図です。誰のどんな場面かを一つ足すと、自分の会社の言葉になります。
経営理念の文面そのものは、自由に決められます。ただし、事実と合わない表現を載せると、あとで取引先や採用で誤解を招くことがあります。『業界最高』のような言い切りは、根拠を示せるか確かめてから使ってください。
一文の理念の作り方を、例と手順つきで詳しくまとめた記事があります。判断に迷ったときの使い方や、見直しの時期にも触れています。
05スローガンとの関係:理念は内向き、スローガンは外向きの短い言葉
「会社 スローガン 作り方」は、理念の話題とつながっています。理念の作り方を一通り終えたあとに考える人が多い部品です。理念が、会社の判断の物差しとして内側で使う考え方だとすれば、スローガンは、お客さまや応募者に向けて短く掲げる言葉です。ホームページのトップや名刺、会社案内に載せる一文は、この外向きの言葉にあたります。

J-Net21のキャッチコピーの解説では、まず商品の特徴(価値)をたくさん書き出すことが出発点とされています。理念の一文から言葉を削って短くするよりも、お客さまにとってどんな価値かを書き出してから選ぶほうが、外に伝わる言葉になります。理念を短縮しただけのスローガンは、社内の人にしか意味が通じないことがあります。
- 理念:なぜこの会社があるのか(内向き・判断の物差し)
- スローガン:お客さまに何を約束するか(外向き・短い言葉)
- 社是・社訓:社員が守る心得(内向き・行動の指針)
- 社名・ロゴ:会社を見分けるしるし(外向き・登録や権利の対象になり得る)
スローガンで注意したいのは、他社と似た言葉になりやすいことです。短い言葉ほど、偶然に同じ表現が使われます。特許庁のJ-PlatPatで似た商標を検索しておくと、同じ言葉を他人が商標登録していないか確認できます。もっとも、検索して出なかったからといって使ってよいと決められるわけではありません。気になるときは弁理士に相談してください。
特許庁の商標審査基準には、企業理念や経営方針を普通に用いられる方法で表示したものとしてのみ認識させる場合は、商標法第3条第1項第6号に該当すると判断する、という扱いが書かれています。理念の文章を普通に表示しただけでは、商標として守りにくいということです。言葉を守りたい場合は、理念の文章ではなく、サービス名など別のしるしで考えるほうが現実的です。
スローガンの作り方を、使う場所の決め方から、言い切りの確認、並べて見たときの印象の確かめ方まで、順に説明した記事です。
スローガンの作り方|会社を作ったら掲げる短い一文の組み立て方
06定款の「目的」と理念を混ぜない:登記される言葉と、考え方の言葉
会社を作るとき、設立の準備として定款を書く中で、「目的」の欄に理念を書き込もうとする人がいます。『社会に貢献する』『お客さまを笑顔にする』といった言葉を、事業目的として書いても、何の事業をするのかが読み取れません。登記の目的は、その会社がどんな事業をするのかを示すもので、第三者が取引先として調べるときの手がかりでもあります。

会社法第911条第3項は、株式会社の設立の登記で、目的、商号、本店および支店の所在場所、資本金の額などを登記しなければならないと定めています。目的は、登記簿を取れば誰でも確認できる情報です。商号と並んで、会社の基本情報のひとつにあたります。
| 比べるところ | 定款の目的 | 経営理念 |
|---|---|---|
| 書く場所 | 定款・登記 | 会社が決めた文書・サイト・名刺など |
| 中身 | どんな事業をするか | 何のために、何を大切にするか |
| 作る義務 | ある(定款の絶対的記載事項) | ない |
| 変えるとき | 定款の変更が必要 | 会社の判断で見直せる |
| 第三者が確かめる方法 | 登記事項証明書 | 会社が公表したものを読む |
設立のあとで目的を変えるには、株式会社の場合、株主総会の決議で定款を変更し、登記も直す手続きが必要です。会社法第466条は、株式会社は成立後に株主総会の決議によって定款を変更できると定めています。理念は気軽に言い換えられますが、目的は手続きを伴います。手続きの細かい内容は、定款と登記のカテゴリーの専門家の説明に任せます。
目的の書き方は、理念と違って、許認可や融資、取引の場面で実際に確認されることがあります。事業の中身をわかりやすく具体的に書くことが、あとで困らないための基本です。目的の欄に何をどこまで書くかは、法務局や専門家に確認しながら決めてください。
もう一つ、理念を定款に盛り込まなくても、会社の方針として文書にすることはできます。会社法第29条は、定款に絶対的記載事項などのほか、法律に反しないその他の事項を記載できると定めています。ただし、定款に載せると変更に手続きが要るため、理念のように見直したい言葉は、別の文書に書くのが現実的です。
07理念を使う場面:仲間への伝え方と、見直しの時期
経営理念は、作って壁に貼るだけでは、働きません。設立から年数がたった会社の話になりますが、中小企業白書(2025年版)は、中小企業を対象にした調査のうち、「従業員への経営理念・ビジョンの共有」に約7割が取り組んでいると分析しています。多くの会社が、作ること以上に、共有することに力を入れているということです。調査の対象や時点は白書の本文で確かめてください。

設立した直後は、従業員がいない人も多いでしょう。その場合の共有の相手は、取引先、家族、これから迎える仲間です。名刺に載せる、ホームページの『私たちについて』に書く、採用の募集文に添えるなど、場面ごとに短い言い方と長い言い方を用意しておくと、使いやすくなります。

判断に使う場面があると、理念と行動のずれにも気づけます。仕事を断るかどうか、値段を下げるかどうか、新しい事業に手を出すかどうか。そのたびに理念を読み返して、答えに使えたかを記録しておくと、半年や一年たったときに、言葉が実際の判断に合っているかを見直せます。
中小企業白書(2022年版)は、会社創業時から掲げる経営理念・ビジョンが形骸化している場合には、経営理念・ビジョンを再構築することも重要な取組の一つといえると述べています。言葉を変えることを恐れず、事業の中身が変わったときは一緒に更新してください。
08まとめ:理念は好みで決める部品。目的とは別に、一文と理由を残す
ここまでの内容を整理します。会社の理念の作り方は、まず経営理念が法律で求められない好みの部品だと知ることから始まります。定款に書く「目的」は登記される別の部品で、混ぜないこと。呼び名は会社ごとに決めてよいこと。例は文面ではなく組み立てを借りること。作るときは、誰に・何を・どのようにから入り、なぜやるのかを足して一文にまとめること。以上が、会社の理念の作り方の骨組みです。

| 区分 | 内容 | 確かめる先 |
|---|---|---|
| 決まっていること | 定款に目的を書く、登記する | 会社法・法務局 |
| 決まっていること | 表現が事実とずれないようにする | 消費者庁などの案内 |
| 好みで決めること | 理念の有無・呼び名・文面 | 自分たちで決める |
| 好みで決めること | スローガンにするか、いつ見直すか | 自分たちで決める |
理念を決める作業は、自分や仲間の考えを言葉にする作業でもあります。うまく書けないときは、設立の直前に無理に完成させる必要はありません。設立後に考え直しても、会社の成立には影響しません。事業を始めて、お客さまとやり取りをする中で、言葉が育つこともあります。まず一文の案と、その理由のメモだけを残しておいてください。
手続きや事業の始め方で迷ったときは、中小企業基盤整備機構のJ-Net21の起業支援にある相談窓口の案内など、公的な窓口を活用できます。この記事の内容は2026年10月23日時点の条文と公式の案内にもとづいています。法律や制度は変わるので、実際に使うときは最新の内容を確認してください。
この図面を閉じる前に
理念は、決めたその日に完成しなくてかまいません。設立の日までに、会社を作る前の今は、誰のどんな困りごとに向き合いたいかを、一行で書いておくだけで十分です。その一行が、名刺にも、ホームページにも、あとで迷ったときの判断にも、同じ顔で出てきます。
この図面は、会社づくりの役に立ちましたか?
ありがとうございます。記録しました。
